大きな間違い
- 小沢良平

- 11月9日
- 読了時間: 5分
Googleのおすすめにこれが出てきました。
産経新聞のコラムです。
これは大きな間違いだと私は思います。
さまざまな考え方があって当然だと思うので他人の考え方を否定したくはありませんが、これを読んで信じてしまう人がいると大変だと感じました。これまで多くの偏差値アップ、逆転合格を出してきた身として、私なりの考えを書きます。【 】の文が上記のページに記載されているものです。
※私が指導してきたのは高校受験が中心です。『中学受験ではこの考え方が当たり前だ』ということであればすみません。ただ、中学受験も高校受験も合格を目指した勉強方法は共通だと思っています。(生徒の現状と目標による個人差はあります。)
【6年生のあるクラス。「後期のテキストはやらずにとにかく過去問」と指示された】
過去問をやる、で合っています。過去問を解かずに合格の可能性の判断することはできません。過去問を解き、自分の点数と合格者最低点(合格者平均点)の差を確認し、下回っているようであれば、あとどの問題ができればそれを越えられるかを確認し、解き直しと類題の演習をする。これが重要です。もちろん、勉強が遅れていて6年生の学習範囲が終わっていないという場合は、見方・やり方を変える必要があります。ただ、塾に通っているのであれば、それは問題ないはずです。【まだまだ復習しなければいけない子は、過去問の効果は非常に薄い、効率が悪いはず】とも書いてありますが、この時期に過去問をやらず復習を頑張ったとして、いつ過去問をやるのでしょうか。例えば1月にやった場合。その時期まで自分の合格の可能性を知ることができないのも不安でしょうし、(模擬試験を受けていればわかるかもしれませんが、問題傾向は学校によって異なるため、完全に正しい判定とは言えないと思います。)そこで良い点数が取れればまだ良いでしょうが、悪い点数だった場合はどうすることもできません。取り返すための勉強をしようにも時間が足りませんし、その時期に志望校を変えようというのもキツい選択になるでしょう。早い段階で過去問をやることには『ゴールまでの差を明確にする』という重要な要素があります。大切なのは、『過去問の使い方』です。
【「過去問には相性がある」という都市伝説を信じて相性の合う過去問を探す】
過去問には相性があります。それは、『同じくらいの偏差値の学校でも、解きやすいと感じる学校と、解きにくいと感じる学校がある』という意味です。例えば算数であれば、空間図形の難しい問題を出す学校は、空間図形が苦手な子は難しい問題と感じる、ということです。【たまたま理科で50点が取れたら「相性合う学校を見つけた!」となってしまう。別の年度を解いてみたらやっぱり40点だったり、算数を解いてみたら壊滅的だったりして、「理科の相性は合うと思ったのになあ」と肩を落とす。】とも記載されていますが、これは過去問の使い方が間違っています。『自分が解きやすい学校を探す』のではなく、『第一志望の傾向を知り、合格できるように勉強する』ことが大切です。難しい空間図形を出す学校を受けたいのであれば、空間図形の勉強を頑張るか、それが厳しいなら他の単元、他の科目で挽回する必要があります。それも過去問演習によってわかることです。
【過去問は1年分だけやって配分がわかればそれでじゅうぶん】
もはや意味がわかりません。ではなぜ過去問は4~6年分くらいが一冊として販売されるのでしょうか。また、過去過去問というさらに古いものもあります。それだけ必要だということです。もちろん出版会社の利益のためということも考えられるでしょう。しかし、過去問は必ず複数年分やるべきです。模擬試験を受けている人はわかると思いますが、偏差値は上下します。「解きやすかった」「選択問題でカンが当たった」「ミスしてしまった」「国語の文章が読みにくかった」「苦手な単元から多く出てしまった」などにより点数も偏差値も上下します。しっかり勉強して着実に力をつけているという子でもそうなります。過去問を1年分だけやり、その年は良かったというだけで受けてしまうと不合格になる可能性も十分ありますし、その年は悪かっただけで志望校を下げてしまってはもったいないです。必ず複数年分やり、何勝何敗なのか、あと何点か、どの問題が解ければ良いのか、などを確認する必要があります。また、問題傾向の確認も必須です。1年分やれば、算数であれば、計算問題、一行問題、数量の問題、図形の問題などがどれくらい出るのかがわかります。しかし、学校にもよりますが、数年単位で出題傾向を変えることもあります。1年分しかやっていないと、問題傾向が変わったときに慌てるでしょうし、対応できません。複数年分やっていて問題傾向が変わる可能性があることを知っていれば、少なくとも慌てることはないでしょう。
【秋のアナウンスは上位校に合格しそうな子に向けたアナウンスです】
進学塾であればその可能性は十分にあります。ただ、情報は精査することが重要であり、生徒であれば自分自身に合うもの、親であれば我が子に合うものを見極める必要があります。「あ、これは自分向けじゃない」と思ったのであれば、自分に合うアドバイスを求めて先生のところに行けばよいだけです。
それでも自分に合うアドバイスをもらえないのであれば、その塾はそういう塾なのでしょう。一部の塾では「宣伝になるような学校に合格してくれる生徒を優先する」ということが事実あります。塾とはいえ会社なので利益も重要なのです。(私が前の塾を辞めた理由の1つがそれですが…)
いずれにせよこの記事は、「大手塾の先生の発言を切り取り、自分の都合の良いように解釈し、オレの方が正しい!と言いたい」という記事だと思います。
『過去問の使い方』で合格率は大きく変わります。それだけやっていれば大丈夫なんてことはありませんが、最重要のツールであることは間違いありません。
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